新紙幣発行に伴うシステム改修費の税務上の取扱い

 20年ぶりに肖像画のモデルが変更された新紙幣の発行が、本日(2024(令和6)年7月3日)から始まります。
 新紙幣は肖像画のモデル変更だけではなく、新技術による透かしや3Dホログラム等が導入されていますので、これまで使用していたレジシステムや自動券売機、自動販売機などは新紙幣への対応が必要になります。
 この新紙幣へ対応するためには、レジシステムなどのプログラム修正や部品の入替えなどをしなければなりませんが、1台当たり100万円以上かかるケースもあるため、その対応に苦慮している中小事業者もいます。
 今回は、このような新紙幣発行に伴うシステム改修費の税務上の取扱いについて確認します。

1.インボイス導入が類似事例として参考になる

 新紙幣発行に伴うシステム改修費の税務上の取扱い、すなわち、その改修費を資本的支出として資産計上しなければならないのか、修繕費として費用処理が可能なのかについては、国税庁が公表している法令解釈に関する情報(軽減税率導入の際の「消費税の軽減税率制度の実施に伴うシステム修正費用の取扱いについて」やインボイス導入の際の「消費税のインボイス制度の実施に伴うシステム修正費用の取扱いについて」)が類似事例として参考になります。

 これら法令解釈に関する情報に照らし合わせると、新紙幣発行に伴うプログラムの修正は「システムに従来備わっていた機能の効用を維持するために必要な修正を行うものである」ことから、「新たな機能の追加、機能の向上等に該当せず、これらの修正に要する費用は修繕費として取り扱われる」こととなります。

 ただし、プログラムの修正の中に、新たな機能の追加、機能の向上等に該当する部分が含まれている場合には、この部分に関しては資本的支出として取り扱うこととなります。

 なお、資本的支出であっても、修正に要した費用の額が20万円に満たない場合や、当該費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合に、その金額が次のいずれかに該当するときは、修繕費として取り扱って差し支えありません。

① その金額が60万円に満たない場合
② その金額が、修正に係るソフトウエアの前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合

出所:国税庁ホームページ

2.新紙幣対応で利用できる補助金

 新紙幣への対応に苦慮している中小事業者は、手続きが煩雑なものもありますが、補助金を活用するのも一考です。
 例えば、中小企業の省力化を支援する「中小企業省力化投資補助金」は、パネル式券売機を導入すると最大1,500万円の補助を受けることができます。
 また、「IT導入補助金(インボイス枠)」は、インボイス制度に対応した会計ソフトの導入にあわせて券売機等を取得することで最大20万円の補助を受けることができます。
 さらに、自治体独自で支援策を講ずるところもありますので、一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。