1.個人事業主の場合
貸倒引当金は、決算日における売掛金や貸付金などの金銭債権について、次期以降に貸倒れが生じると予想される金額を見積って設定します。
貸倒引当金には、「個別評価による貸倒引当金(個別評価金銭債権に係る貸倒引当金)」と「一括評価による貸倒引当金(一括評価金銭債権に係る貸倒引当金)」があります。
個人事業主については、「個別評価による貸倒引当金」は青色申告者、白色申告者を問わず適用できますが※1、「一括評価による貸倒引当金」は青色申告者だけが適用できます※2。つまり、白色申告者は「一括評価による貸倒引当金」を設定することができません。
では、法人についても、青色申告法人と白色申告法人で貸倒引当金の取扱いが異なるのでしょうか?
※1 白色申告者は、事業的規模の所得において個別評価のみ認められます。
※2 青色申告者は、事業的規模の所得において個別評価、一括評価が認められます。ただし、青色申告者であっても一括評価が認められるのは事業所得だけであり、不動産所得については認められません。
2.法人の場合
法人についても、貸倒引当金は個別評価金銭債権と一括評価金銭債権とに区分して設定します。
個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の適用対象法人は、次のとおりです(法法第52条第1項)。
① 期末資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人(資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人等による完全支配関係がある子法人等を除く)
② 公益法人等又は協同組合等
③ 人格のない社団等
④ 銀行、保険会社その他これらに準ずる法人
⑤ 金融に関する取引に係る金銭債権を有する一定の法人(上記①から④までに掲げる法人を除く)
また、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定には、貸倒実績率を用いる方法(原則)と法定繰入率を用いる方法(特例)があります。
前者の適用対象法人は上記①~⑤と同じですが、後者の適用対象法人は次のようになっています(措法57の9)。
① 期末資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人(資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人等による完全支配関係がある子法人等を除く)※
※ ただし、適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等をいいます)を除きます。
② 公益法人等又は協同組合等
③ 人格のない社団等
個別評価金銭債権に係る貸倒引当金と一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の適用対象法人は以上のとおりですが、その適用対象法人が青色申告法人であることを要求するものとはなっていません。
つまり、白色申告法人でも貸倒引当金を設定することができるということです。