2007(平成19)年4月1日以後に行った資本的支出は、原則として、その資本的支出の金額を取得価額とする減価償却資産を新たに取得したものとされます。
では、その資本的支出の金額を取得価額として新たに取得したものとされる減価償却資産に、少額減価償却資産の損金算入の特例※は適用できるのでしょうか?
以下では、この点について確認します。
※ 少額減価償却資産の損金算入の特例については、本ブログ記事「30万円未満の少額減価償却資産の損金算入制度と別表16(7)の記載例」をご参照ください。
1.原則として適用不可
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(以下「少額資産の特例」といいます)とは、青色申告の中小企業者等が2006(平成18)年4月1日から2026(令和8)年3月31日までの間に取得し、又は製作し、若しくは建設し、かつ、当該中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産で、その取得価額が30万円未満のものについては、その取得価額の合計額が300万円に達するまでは損金の額に算入できるという制度です(租税特別措置法第67条の5第1項)。
2007(平成19)年度税制改正により、2007(平成19)年4月1日以後に行った資本的支出は、原則として、その資本的支出の金額を取得価額とする減価償却資産を新たに「取得」したものとされますが、この場合の「取得」は、少額資産の特例における「取得」又は「製作」若しくは「建設」に該当するのでしょうか?
2007(平成19)年度税制改正において、資本的支出の金額を取得価額として、減価償却資産本体と種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとされたのは、減価償却資産本体に係る取得価額と区分して、資本的支出に係る費用を別の取得価額とすることにより、2007(平成19)年3月31日以前に取得された減価償却資産に対する資本的支出についても新しい償却方法により償却ができることとされるなど、償却限度額の計算上の単なる取得価額の区分に関するものであると考えられます※。
したがって、資本的支出の金額を取得価額として新たに取得したものとされる減価償却資産であっても、既存の減価償却資産につき改良、改造等のために行った支出であることから、原則として、少額資産の特例における「取得し、又は製作し、若しくは建設し、かつ、当該中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産」には該当しません(租税特別措置法関係通達67の5-3前段)。
※ 資本的支出がその資産全体の使用可能期間の延長又は価額の増加といった効果を与えるものであること及び資産本体と物理的に一体であることは、従前と変わりません。
2.例外的に適用可能
しかしながら、資本的支出といってもその内容は様々であり、資産本体に単に付随して機能するようなものばかりでなく、その資本的支出自体が一個の資産として機能し、資産本体とは別個の資産として管理・償却を行うとしても問題のないものも見受けられ、既存の取扱いの中にも、そのようなものが存在します。
例えば、その資本的支出の内容が規模の拡張である場合や単独資産としての機能の付加である場合など、実質的に新たな資産を取得したと認められる場合には、例外的に少額資産の特例を適用することができるとされています(租税特別措置法関係通達67の5-3後段)※。
なお、「規模の拡張である場合や単独資産としての機能の付加である場合など」としては、例えば、ソフトウエアのバージョンアップを行った場合であって、既存の機能の強化・拡充にとどまらず、それ自体機能的独立性が高い新機能を追加した場合などが考えられます。
※ 個人に関しては、このような通達は発遣されていませんが、租税特別措置法の規定振りが法人と同様であることから、同じ結論になるものと考えられます。