1.修繕費か資本的支出か?
LEDは消費電力が少ないので電気代の節約になり、また、寿命も長いので従来の蛍光灯よりも取替費用を抑えることができます。
そのため、初期投資額はそれなりになるものの、長い目で見れば費用削減につながるため、店舗や事務所などで使用している蛍光灯を一斉に蛍光灯型LEDランプに取り替えるところも増えています。
1本2本の交換なら、その購入費用を消耗品費などの勘定科目で費用処理することに躊躇することはないと思います。
しかし、店舗や事務所のすべての蛍光灯を一斉にLEDに交換するとなると金額も高額になりますので、修繕費として費用処理できるのか、資本的支出として資産計上すべきなのかについて疑問が生じることもあると思います。
そこで、次の設例をもとに、この点について考えます。
【取替の概要】
・店舗の蛍光灯100本すべてを、蛍光灯型LEDランプに取り替える。
なお、この取替えに当たっては、建物の天井のピットに装着された照明設備(建物附 属設備)については、特に工事は行われない。
・蛍光灯型LEDランプの購入費用は、1本10,000円
・取付工事費は、1本1,000円
・取替えに係る費用総額は、1,100,000円
【取替メリット】
・消費電力が少ないので、電気代の削減になる
・寿命が長いので、費用が節約できる
・LEDランプの白色光は紫外線をほとんど含まないため、生鮮物や化学薬品に影響が小さく、また虫の飛来抑制にもなる
・安全で軽量である
・発熱が少ないため、空調に与える影響が少なく、エアコンなどに係る負担を軽減できる
2.部品の性能向上であって照明設備の価値向上ではない
その支出が修繕費になるのか資本的支出になるのかについては、次のように規定されています。
すなわち、法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額は修繕費となります(法人税基本通達7-8-2)。
一方、法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額は資本的支出となります(法人税法施行令第132条、法人税基本通達7-8-1)。
本設例において考慮すべき点は、蛍光灯を蛍光灯型LEDランプに取り替えることで、節電効果や使用可能期間などが向上している事実をもって、その有する固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増しているとして資本的支出に該当するのかどうかということです。
この点について、蛍光灯(又は蛍光灯型LEDランプ)は、照明設備(建物附属設備)がその効用を発揮するための一つの部品であり、かつ、その部品の性能が高まったことをもって、建物附属設備として価値等が高まったとまではいえないと考えられます。
したがって、本設例の蛍光灯型LEDランプ への取替費用(総額1,100,000円)は、修繕費として処理することが相当です。