低未利用土地等を譲渡した場合の100万円特別控除の創設

 空き地などの低未利用土地等が売却されずにそのまま放置され、都市が虫食い状にスポンジ化して問題となっています。
 そこで、2020年度(令和2年度)税制改正において、空き地の売却を促して有効活用を図るための特例措置が創設されました。
 保有期間が5年を超えていて売却額が500万円以下の土地を、市区町村長の確認を取得して親族や特別関係者以外へ譲渡した場合に、土地の売却益から最大100万円を控除するというものです。
 今回は、低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除制度について確認します。

1.適用対象となる譲渡の要件

(1) 要件

 特例措置の適用対象となる譲渡は、以下の要件に該当する譲渡とされています。

① 譲渡した者が個人であること
② 都市計画区域内にある低未利用土地又はその上に存する権利で、市区町村長の確認がされたもの
③ 譲渡の年の1月1日において所有期間が5年を超えるものの譲渡であること
④ 譲渡者の配偶者等、当該譲渡者と特別の関係がある者への譲渡でないこと
⑤ 低未利用土地等及び当該低未利用土地等とともにした当該低未利用土地等の上にある資産の譲渡の対価の額の合計が500万円を超えないこと
⑥ 一筆であった土地からその年の前年又は前々年に分筆された土地又は当該土地の上に存する権利の譲渡を当該前年又は前々年中にした場合において本特例措置の適用を受けていないこと

(2) 低未利用土地とは?

 上記(1)要件②における低未利用土地とは、都市計画法第4条第2項に規定する都市計画区域内にある土地基本法第13条第4項に規定する低未利用土地(居住の用、業務の用その他の用途に供されておらず、又はその利用の程度がその周辺の地域における同一の用途若しくはこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っていると認められる土地)をいいます。

 具体的には、空き地(一定の設備投資を行わずに利用がされている土地を含みます)及び空き家・空き店舗等の存する土地をいいます。
 ただし、コインパーキングについては、一定の設備投資を行い、業務の用に供しているものであっても、譲渡後に建物等を建ててより高度な利用をする意向が確認された場合は、従前の土地の利用の程度がその周辺の地域における同一の用途又はこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っており、低未利用土地に該当すると考えて差し支えないとされています。

(3) 市区町村長の確認とは?

 上記(1)要件②における市区町村長の確認は、以下のいずれも満たす必要があります。

① 当該土地が低未利用土地であること
② 買主が利用意向を有すること
③ 譲渡の年1月1日において所有期間が5年を超えること

 上記①~③の確認のために、市区町村長に提出する書類は次のとおりです。

  提出書類
①の確認 イ.別記様式①-1
ロ.売買契約書の写し
ハ.以下のいずれかの書類
 (イ) 所在市区町村等が運営する空き地・空き家バンクへの登録が確
認できる書類
 (ロ) 宅地建物取引業者が、現況更地・空き家・空き店舗である旨を表
示した広告
 (ハ) 電気、水道又はガスの使用中止日が確認できる書類
 (ニ) その他要件を満たすことを容易に認めることができる書類
②の確認 別記様式②-1(宅地建物取引業者の仲介により譲渡した場合)
別記様式②-2(宅地建物取引業者を介さず相対取引にて譲渡した場合)

※ 別記様式②-1 及び②-2 を提出できない場合に限り、別記様式③(宅地建物取引業者が譲渡後の利用について確認した場合)によっても確認可能とする。
③の確認 土地等に係る登記事項証明書

(4) 特別の関係がある者とは?

 上記(1)要件④における特別の関係がある者とは、次に掲げる者をいいます。

① 当該個人の配偶者及び直系血族
② 当該個人の親族(①を除く)で当該個人と生計を一にしているもの
③ 当該個人と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者及びその者の親族でその者と生計を一にしているもの
④ ①~③に掲げる者及び当該個人の使用人以外の者で当該個人から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの及びその者の親族でその者と生計を一にしているもの
⑤ 当該個人、当該個人の①及び②に掲げる親族、当該個人の使用人若しくはその使用人の親族でその使用人と生計を一にしているもの又は当該個人に係る③④に掲げる者を判定の基礎となる所得税法第2条第1項第8号の2に規定する株主等とした場合に法人税法施行令第4条第2項に規定する特殊の関係その他これに準ずる関係のあることとなる会社その他の法人

(5) 500万円を超えないとは?

 上記(1)要件⑤における譲渡対価500万円には、当該土地と当該土地を敷地とする建物等だけではなく、それらの固定資産税精算金も含みます。

(6) 分割譲渡等への適用制限

 上記(1)要件⑥は、分割譲渡等への適用を制限するために設けられています。なお、要件⑥を満たすことについて、市区町村長は 別記様式①-1 (低未利用土地等確認書)に記載することとされています。

2.適用対象期間

 本特例措置は、2020年(令和2年)7月1日から2022年(令和4年)12月31日までの間に上記1(1)の要件を満たした譲渡をした場合に適用を受けることができます。