上場株式等の配当の申告不要制度は損益通算時も適用可能

1.申告分離課税

 2009年(平成21年)1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当所得については、総合課税に代えて申告分離課税により確定申告をすることができます。
 申告分離課税を選択した場合の留意点は次の通りです。

(1) 総合課税を選択した場合は配当控除の適用がありますが、申告分離課税を選択した場合は配当控除を適用することができません。

(2) その年分に生じた上場株式等の譲渡損失の金額と損益通算ができます。
 例えば、その年分のA株式の配当100とB株式の譲渡損失90を損益通算して、配当所得を10とすることができます。

(3) 前年以前3年以内に生じた上場株式等の譲渡損失を繰越控除することができます。
 例えば、その年分の配当100と3年前に生じた譲渡損失90を損益通算して、その年分の配当所得を10とすることができます。

(4) 確定申告をする上場株式等の配当所得のすべてについて、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択しなければなりません。
 例えば、A株式は総合課税、B株式は申告分離課税という選択はできず、A・B株式ともに総合課税又はA・B株式ともに申告分離課税という選択をしなければなりません。

2.申告不要制度

 上場株式等の配当については、確定申告をしないで20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率による源泉徴収だけで課税関係を終了させることができます。
 申告不要制度を選択した場合の留意点は次の通りです。

(1) 上記1.(4)にある通り、上場株式等の配当所得のすべてについて総合課税と申告分離課税のいずれかを選択しなければなりませんが、1銘柄1回に支払われる配当等ごとに申告不要の特例を適用し、上場株式等の配当所得に算入せずに申告することは可能です。
 例えば、A・B株式ともに申告分離課税を選択している場合に、A株式の中間配当については申告分離課税で申告し、A株式の期末配当については申告不要とすることは可能です。
 なお、特定口座(源泉徴収選択口座)内配当等について申告不要の特例を適用する場合には、特定口座単位で行うことになります。

(2) 上記1.(2)(3)の損益通算の適用を受けるために確定申告書を提出する場合にも、申告不要の特例を適用することができます。
 例えば、A株式の配当60、B株式の配当40、C株式の譲渡損失90を損益通算して、60+40-90=10をその年分の配当所得とすることもできますし、B株式の配当40を申告しないで60-90=△30の譲渡損失を翌年に繰り越すこともできます(この場合、A株式の配当は0となり、その年分の配当所得は0となります)。