親から土地と借入金の贈与を受けた場合の贈与税等の課税関係

 先日、次のような質問を受けました。

 「兄弟2人(兄をA、弟をBとします)で親から土地の贈与を受けることを考えているが、親がその土地を取得したときの借入金が残っており、その借入金をAが全額負担した場合でも、Aに贈与税がかかるのか?」

 これは、借入金付きで土地の贈与を受ける「負担付贈与」といわれるものです。この質問に答えるために、次の数値例を設定します(Aが借入金の債務者となることにつき、銀行の承諾を得ているものとします)。

・土地の相続税評価額・・・4,000万円
・土地の時価・・・5,000万円
・借入金残高・・・2,500万円

1.借入金を全額負担しても贈与税はかかるか?

 例えば、贈与を受ける土地の割合がA:B=3:2だとしたら、借入金を全額負担したとしてもAには贈与税がかかります。
 本来、贈与税を計算するときの評価は相続税評価額によりますが、不動産の負担付贈与の場合は、時価で評価をします。
 一方、負担付贈与の場合は、贈与財産の価額から負担額を差し引いた価額が贈与税の課税対象になります。
 したがって、Aの贈与税の計算をするときの課税対象は、5,000万円×3/5-2,500万円=500万円となり、この500万円から基礎控除110万円を引いた390万円に対して贈与税がかかります。

 また、贈与を受ける土地の割合がA:B=1:1だとしたら、借入金を全額負担したAには贈与税はかかりません。
 この場合のAの贈与税の課税対象は、5,000万円×1/2-2,500万円=0円となるからです。

2.贈与した親に所得税・住民税がかかる可能性がある

 通常の贈与であれば無償で資産を譲渡するので、贈与者である親が課税されることはありません。
 しかし、今回のような借入金付きで土地の贈与をする負担付贈与の場合は、親の借入金(債務)が消滅し、親は債務の消滅という経済的利益を得ることになるのでみなし譲渡課税の対象になります(所得税法第59条)。
 つまり、2,500万円の借入金が消滅するということは、土地を2,500円で売却したのと同じとみなされ、親には所得税・住民税がかかる可能性があります。
 例えば、土地の取得価額が2,000万円だったとしたら、2,500万円-2,000万円=500万円の譲渡益となり、所得税・住民税がかかります(各種特例は考慮していません)。
 一方、土地の取得価額が3,000万円だったとしたら、2,500万円-3,000万円=△500万円の譲渡損となり、所得税・住民税はかかりません。